2年 式の計算の利用 〜カレンダーを使え〜
文字式の利用は図形の証明の前段階の学習である。この単元はただ単に文字式の利用としてとらえるのではなく。本格的に演繹的な推論を学習する図形の前段階の学習であるということを肝に据えるべきであろう。文字を使っての証明なのだ。
そして,大切にすべきことは命題を生徒に意識させることである。私はこの学習の段階で仮定と結論ということばを教えてしまう。(*本当は命題ということばも教えたいのだが・・・。)それは生徒にとっても図形とのつながりが,よいと考えるからだ。
カレンダーを使え!
この小単元の導入は,現行の啓林館の教科書も使いはじめたが,「カレンダー」である。どうしてカレンダーがよいかというと,これは教科書を見ているだけでは分からないのだ。
○身近で数が規則正しく並んでいる
○数が有限である
○問題変えがしやすい
身近で数が規則正しく並んでいる
これは言うまでもない。日常生活の中でカレンダーはほぼほとんどの人が毎日見ているし,そして,多くの部屋で飾られている。これだけ身近で数が規則正しく並んでいるものは他にない。
数が有限である
これを意識していない教師はいるのではないか?カレンダーは言うまでもなく,数は最大で31までであり,有限である。したがって,たとえば「カレンダーの横3つの数ならば,その和は真ん中の数の3倍である」という命題ならば,文字を使わなくても,すべての横3つの数のすべての場合を調べることで,証明することができるのだ。
これは文字を使う必要性にも関わっているので,教師は意識しておきたいことだ。
問題変えがしやすい
これは具体的な授業の説明で理解してください。
私はカレンダーを使ってこんな授業をします
① 命題作り,結論を探す!
まず,カレンダーを提示して,「これは何だ」と問います。「6月のカレンダーだ」と答えてくるでしょう。そして,横3つを○で囲み,さらに3つぐらいを囲み,「『月のカレンダーの横3つの数』どこの3つをとってもいつでも言えることはないか?」と問います。
時間をとってノートに書かせると,つぎのようなことが出てきます。
・整数が並んでいる ・真ん中が偶数の場合と奇数の場合がある ・1ずつ増えている
・左が偶数なら右も偶数 ・和は3の倍数 ・左と右の和は真ん中の数の2倍 など
ここはどんどん言わせてください。特に1つずつ増えるは文字に置くときに必要になります。生徒もカレンダーだから当たり前だと思って言わない場合もあります。机間巡視の時に生徒がどのように考えているか?見取りましょう。出そろったあとに,「どうして?」と問います。そうすれば「整数が並んでいる」などは,カレンダーだからと生徒は説明します。そして,説明が必要でないもの。カレンダーだからだけでは説明できない説明が必要なものに分けられます。そして,「6月のカレンダーの横3つに並んだ数ならば、その和は真ん中の数の3倍である」という命題ができあがります。結論を探させることは,生徒にとって発見的な学習になります。いつでも言えることを説明しようといい、追究させます。
② 個人追究から全体追究
追究させる中で,実態を捉えて,「全体追究をどのように仕組むか?」考えます。例えば,数で説明できている生徒が入れば,板書させます。
そして,(16,17,18の場合)はいいけど,いつでも言えることは説明できていないことを確認し,いつでも言えることを説明するためにはどうしたらよいか?問います。場をつくして確かめることも確認します。
導入で文字を使っての説明を扱っているので,文字を使うことは出てくると思います。また,連続する整数の文字の表し方がn,n+1,n+2等が出てこないときは最初に「1ずつ増えている」が利用できます。学級の実態に応じて,支援していきましょう。同じ追究をしている生徒を関わらせることも手立てです。
全体追究で証明を書かせた後に,全体で確認します。このときに相手が納得できる説明かどうかを考えさせることが大切です。それは生徒がとかく計算だけを示しがちだからです。そして,説明の手順を指導することが大切です。
私は以下のように指導していますが,
・文字を断る(文字で表す)こと
・式で表し,式変形すること
・式を読むこと
・説明したことを断ること
これは日常生活で説明しているのと同じですし,図形の証明でも同じなのですが,生徒にはなかなか流れを抑えないと定着しません。全国学調でもずっと出題されたように,この単元は大切にしたいですね。
また,文字をn-1,n,n+1で表してよいことも(もちろん,n-2,n-1,nでもよいこと),指導したいですね。
第2時は問題変え
前回説明したことを確認し,
「6月のカレンダーの横3つに並んだ数ならば、その和は真ん中の数の3倍である」
この結論を成り立たせる。ほかの仮定はないですかと問います。(私は仮定と結論ということばをここで指導してしまうので使います。)
「6月のカレンダーの ならば、その和は真ん中の数の3倍である」
生徒はすぐに縦と答えてきます。ほかにないかなと聞くと生徒はいろいろ考えてきます。このことを考えさせることにより,カレンダーの中で規則正しく3つ並んでいるのであれば真ん中の数の3倍であるという構造に気づき始めます。
この時間は文字を使って説明することに慣れさせたいので,「前時の説明を参考にしながら説明してみよう」と追究させます。
*1,2時としましたが,ここまでやるのも時間的にたいへんです。学級の様子を見ながらどこにポイントに当てるのか?考えながら指導しましょう。
第3時は偶数と奇数の和は奇数である
第3時は偶数と奇数の和は奇数であることを扱います。
私はノートの1/6~1/8ぐらいの大きさで以下のように書かせます。次にAに偶数を5つ,Bに奇数を5つ書くことを指示します。そして,A+Bを足すように指示します。このとき,連続した偶数など特殊な数を入れてないか確かめてください。
そして,A+Bはどんな数になった?と問います。偶数,奇数を扱っているので,奇数という発言が出てきます。整数などが出てきたら,「そうだね。整数同士を足せば、整数になることは1年生のときに学習したね」と褒めましょう。
「偶数と奇数の和は奇数である」という命題ができあがります。そして,「『いつでも言えること』を説明するためには,どうしたらいいかな」と問います。この時間になれば文字を使うとすぐに返ってくるはずです。そこで,数は無限になるのですべてを調べることはできないねといい。文字を使って説明することをおさえます。
そして,偶数の文字の置き方を説明します。ここは生徒の力では無理です。さらに説明に入ります。ここは流れを確認しながら説明します。全部説明が終わったときに,mとnなどで文字を変える必要性を扱います。
次に問題変えです。この問題を変えられることを聞けば,偶数,奇数を変えること,和を変えることなどが出てきます。
全てを考えさせるのでなく,ここは「偶数と奇数の和は奇数である」の説明を示して,問題変えした問題を考えさせるのが,得策と考えています。
第4時?
私は「2桁の整数とその十の位と一の位を入れ換えた数の和は11の倍数である」を扱います。前時同様に枠を切り,ほぼ同様の流れで指導します。
この小単元では,1年で学習した「整数+整数=整数」であることを公理として,論証していくわけですが,生徒にそのことを伝えたからと言って理解できない。「なぜ」を問うことをこの単元,「図形の調べ方」などで繰り返していき,演繹的な推論形式に慣れさせていくしかない。